Lost in Translation: The Manager’s Role in Agile #RSGT2020

Regional Scrum Gathering Tokyo 2020に参加して、時間の許す限りセッションを聞いてきました。発表資料は共有されているので、内容の振り返りなどに活用できます。

ただDay2 Keynote "Lost in Translation: The Manager’s Role in Agile(発表者:Michael Sahotaさん)"は資料が見つからなかったため、自分自身の理解をまとめておきます。

 

  

Agileではマネージャーは不要か?マネージャーは全て排除する?

Agile Transformationではマネージャーは不要になるという意見があるが、あまりいい考えではない。その理由は以下2つ。

  • 仕事がなくなると考えるマネージャーの心理的安全性は失われる。その結果、Agile Transformationに敵対してしまう。変革を目指すならNo one gets left behind!の姿勢が大事。
  • ヒエラルキーを急に排除するような急激な変化はうまく行かない。その証拠は、大規模なTeal型組織のケーススタディでは、彼らですらヒエラルキーを持っている点。自律分散型組織はあくまでも最終的な目標であり、いきなり実現できない。

むしろマネージャーやあらゆるリーダーレベルでAgile Transformationを始めるべき。その理由は、リーダーが変われば組織を変えられるから。ボトムアップでは組織の一部にAgile実践者が出来るだけになってしまう。

ただし、リーダーたちは新しいテクニックを身につけるという意識ではなく、世界の捉え方を変えるという姿勢が必要になる。新しい世界の捉え方とはすなわちAgile Mindsetである。Sahotaさんが大切だと思うAgile Manifestoの一節は以下3つ。

  • We are uncovering better ways of developing software by doing it and helping others do it.(この一節は常により良い方法を探し続けるという、Culture of Learningの大事さを伝えている)
  • Responding to change over following a plan.(変化への適応力が重要である)
  • Individuals and interactions over processes and tools.(個人と相互作用が重要である)

 

具体的にはマネージャーはAgile Transformationにどう取り組むべきか

1. X理論からY理論へ移行する
  • X理論・Y理論の解説はこちら
  • まずはリーダー自身がX理論からY理論へ考え方を移行すべき。
  • メンバーはそれをコピーしていく。やがては組織文化となっていく。
2. 権限を移譲する
  • 一気に移譲しない。少しずつ。
  • リーダーが自分で決める→アドバイスを求めてからリーダーが決める→一緒に決める→リーダーがアドバイスをする→メンバーが決めたことを報告してもらう、という段階がある。

 

Agile Tranformation以降のマネージャーの仕事

  • ScrumMaster/ ProductOwner/ Tech Lead/ Org Coachなどが考えられる。
  • 何をするにしても"Everyone Needs to Add Value"。価値を付与する仕事でないといけない。
  • 急には変われないので、マネージャーに対してもコーチングが必要。


Q&A

組織変革の際に所謂"The Frozen Middle"という課題は存在するか?(参考リンク

  • 存在しないと思う。トップが変われば、中間層のマネージャーも変わる。中間層 が変わらないのは、トップが本当に変わっていないから。

国ごとにAgile Tranformationへの対応に違いはあるか?

  • 各国でリーダーのトレーニングをしたが、国ごとに違いはない。人ごとの違いのほうが大きい。

"No one gets left behind!"であれば決して人を排除してはいけない?

  • まずは"No one gets left behind!"の姿勢で会話や教育を進めるべきだ。新しい世界の捉え方や価値について伝える努力をする必要がある。
  • ただ、どうしてもその価値観を受け入れないという人はいるだろう。それは良い/悪いではなく、生き方や価値観の問題である。そのような人は自分の価値観に合った環境にいってもらう方がお互いにとって幸せだと思う。


補足:Sahotaさん本を読んでみた

Sahotaさんの本が無料でDownload出来るので読んでみました。

www.infoq.com

 面白かったところ

Agile Transformationとしてカンバンは不十分だが、トロイの木馬あるいはゲートウェイドラッグにはなりうる。カンバンは管理文化との親和性が高いので、既存の管理を行う組織であっても取り入れやすい。しかし、改善のきっかけを与えて、組織の変革のトリガーになるかも。その意味でゲートウェイドラッグだ。

上記の様な記載がありました。(なかなか物騒な記載ですが)

私は大手保険会社系システム子会社のメンバーに対して、アジャイルを取り入れるためのアドバイスしたことがあります。その方はプロジェクトに対しての影響力は持っていましたが、会社の組織標準などには従う必要があり、スクラムをそのまま導入することは難しそうでした。

そこで私は、既存の組織標準の範囲内でカンバンを導入することを勧めました。

導入後は3ヶ月程度しかフォローできませんでしたが、チームメンバーにインタビューをしてもらうと、「このプロセスに無駄があるから変えたい」「不必要な管理の仕事が減った気がして楽しい」などの意見が出たそうです。

メンタリティが変わってきたなという感触があったので、上記の記載は実感と一致しています。