ディシプリンド・アジャイル (Disciplined Agile) って何だっけ? #PMIセミナー

先日PMI日本支部主催のディシプリンド・アジャイル(DA)概説セミナーに参加しました。 ディシプリンド・アジャイル創始者の一人であるマーク・ラインズ(Mark Lines)が講師というのがポイントでしょうか。セミナーの内容を自分なりにまとめてみます。

 

PMIとディシプリンド・アジャイルの関係

ディシプリンド・アジャイルは、もともとIBMで開発されたアジャイルフレームワークです。後にその知的資産はディシプリンド・アジャイル・コンソーシアムに移譲され、2019年8月にPMIに買収されました。

PMIは、PMBOK第6版でアジャイルに関する記述を大幅に追加し、「アジャイル実務ガイド」も発刊しました。DA買収もPMIのアジャイルシフトの一環だと思います。
 

セミナーの内容

ディシプリンド・アジャイルとは何か?

DAはフレームワークというより、アジャイルラクティスを包括的に含んだツールキットである。マーク・ラインズは「DAとはアジャイル全体を包む傘のようなもの」と言っている。

下の図から分かるようにスクラム、XP、Kanbanを始めとしたアジャイルに関連する多くのメソッドやフレームワークを取り入れている。スケーリングに関しては、SAFe、Spotify Modelなどからもプラクティスや考え方を取り入れている。(https://www.pmi.org/disciplined-agile/ip-architecture/disciplined-agile-is-a-hybrid)

https://www.pmi.org/-/media/pmi/microsites/disciplined-agile/hybrid-toolkit1.png?la=en&v=ffc08c73-4e94-4ede-b85f-cf9bb0bdf9a7

なぜ必要なのか?

アジャイルの世界は多くの手法やメソッドが乱立してカオスに陥っている。

各メソッドやプラクティスは重要であるが、パズルの1ピースの様なものである。アジャイルをマスターするためには、個別のメソッドについて認定を取得し、自力でまとめる必要がある。加えて、メソッドを理解したとしても、実際に適応することはさらに困難である。

DAという包括的なツールキットを提供することで、このような状態を解決したい。

メリットは何か?

状況に応じて使用すべきアジャイルラクティスがまとめられている点。いつ、どのような状況で、何をするべきかが明示されているため、ユーザーは簡単にプラクティスの取捨選択ができる。

DAはあくまで選択可能なオプションを提供するだけであり、必須のルールではない。そのため、ユーザーの環境などによって自由に取捨選択できる。スクラム、XP、Kanban、SAFeなどと組み合わせて使用することもできる。 

どう使うのか?

状況や問題に応じて、どのようなプラクティスが推奨されるか要約されている。その中から適用するプラクティスを自分で選択する。

例えば、プロジェクト初期にスコープを検討している場合、「初期のスコープを探索する(Explore Scope)」という項目を選択する。

https://static.projectmanagement.com/images/blogs/Toolkit-ProcessGoals-Roadmap3.png

項目内にはスコープ検討に必要な観点や考慮すべき点が記載されており、それらに対処できるアジャイルラクティスのオプションが並んでいる。オプションの中から、自分たちの状況にふさわしいプラクティスを選択して適用する。

https://www.pmi.org/-/media/pmi/microsites/disciplined-agile/goal/explorescopegoaldiagram.svg?la=en&v=b5116903-fd2f-49fa-b084-06d32349edf0

レコーディング

このセミナーの内容はYoutubeで公開されています。

 

感想

DA以外の解決策もある? その1

アジャイルを知ることと実際にプロジェクトに適応することの間のギャップが大きい点は、多くの場面で指摘されていると思います。いわゆる「チェスのルールを理解することは大事だが、ルールブック(スクラムガイド)を読んでも偉大なプレーヤーにはなれない。チェスの基本的な戦略を学ぶ必要がある。」という話です。

このような問題点に対応するため、スクラムではスクラムパターンというものが存在します。スクラムがある状況でうまく働いた様子をパターンとして記述し、他のユーザーもそのパターンを参考にすることでスクラムをうまく活用できることを目指します。

 スクラムパターンがまとめられた本には、A Scrum Book: The Spirit of the Gameがあります。

 

DA以外の解決策もある? その2

アジャイルを知ることと適応することのギャップに加えて、アジャイルラクティスと名乗るものが非常に多く、カオスのような状況であることもしばしば指摘されます。

解決策の1つとして、多くのアジャイルラクティスを、適用するタイミングごとにシンプルなフェーズに分類し、何をするか、どのような課題を解決できるかなどの観点でまとめた Open Practice Libraryがあります。

個人的には、Open Practice LibraryはよりシンプルなDAという印象で、カオス化したアジャイルに対する課題意識や解決策がよく似ています。シンプルなだけにDAよりも取っ付きやすいです。(DAより"アジャイルっぽい"ですね)

RedHatアジャイルを導入する際に、Open Practice Libraryを参考にしたそうです。

 

https://d33wubrfki0l68.cloudfront.net/57dbd09220d511e83b5f6a880c05448b4664f3a9/7845e/images/loop-labels-path.svg

 

結局DAのどこが優れているのだろう? 

ではDA以外の解決策に比べて、DAのどこが優れているのでしょう?

私は"アジャイルっぽさ"が薄い点だと思います。Disciplinedと自ら名乗っているように、アジャイルフレームワークの中ではマネジメント要素が強い方だと感じます。

セミナーでマーク・ラインズも、「従来のプロジェクトマネジメントとアジャイルのアプローチには、ユニークな部分もあるが共通の部分もある」と述べていました。例えば、DAのリスクマネジメントはPMBOKのリスクガイダンスを織り込んでいるそうです。「ガバナンスはアジャイルでは重要視されていなかった。DAはガバナンスを重要視する」という発言もありました。

DAのマネジメント色の強い性格は、一部の人には敬遠されるかもしれないですが、必要とされる環境はあるように思います。

 

補足

Disciplined Agile 認定資格について

Disciplined Agile 認定資格(Disciplined Agile Senior Scrum Master)を取得しました。詳細は以下をご覧下さい。