星のように輝くプロダクトオーナー

業務にスクラムを取り入れて3年ほどになりますが、まだ考えることは多いです。

効果的なプロダクトオーナーの役割を考えている時、ある面白い例えを見つけました。

そして、この例えからプロダクトオーナーの理想像が見えてきました。

 

 

プロダクトオーナーの役割

改めてスクラムガイドを紐解くと、その役割は以下のようになります。

比較のためスクラムマスターの役割も挙げておきます。

 

プロダクトオーナー

  • 開発チームから生み出されるプロダクトの価値の最大化に責任を持つ。
  • プロダクトバックログの管理に責任を持つ 1 人の人間である。

スクラムマスター 

 

プロダクトオーナーの研修では、その役割は「チームのROI(Return on Investment)を最大化する」ことだと言われました。

 

困難な現実

ただ実際にスクラムを行っていると、プロダクトオーナーはこんな状況に陥りやすいです。

 

  • やってくる作業の優先順位を付けているだけ
  • 生産性を上げようとチームメンバーの作業効率ばかり気になってしまう

 

それでもいわゆる KAIZEN の効果は出るでしょう。

しかしこの方法をROIの面から考えると、Investmentの最小化を目指すもので、Returnの最大化はほとんど考慮されていないと思います。

やがてチームメンバーはワクワクする気持ちを失っていきます。

 

この問題意識を上手く説明することができませんでした。

 

星と守り神 - Star and Guardian -

そんなとき、偶然ある記事を見つけました。

Mike Cohn氏によるプロダクトオーナーとスクラムマスターの兼任を否定するお話ですが、その説明がいいです。

最近のハーバードビジネスレビュー(2010年10月)でHayagreeva Rao教授がMBA課程の学生に与えた、17世紀の海賊船の船長の仕事を設計するという課題の結果について書いています。学生たちはふたつの分野の責務が合わせっている仕事を設計しました。

  1. 星としての役割—どの船を襲うのか決める戦略的な仕事。戦闘時の船員への命令。他の海賊船の船長との交渉など。
  2. 守り神としての役割—略奪品の分配の指示。諍いの調停。船員への懲罰。負傷者への手当。

この職務明細書の問題は星としての仕事と守り神としての仕事が混ざっていることです。教授が指摘する通り、このふたつの種類の仕事両方が得意な人物はほとんどいません。星の仕事はリスクを背負って起業家精神を持たなければなりませんが、守り神の仕事は誠実さと一貫した態度が必要です。海賊船の船長は獲物になる船を見つけたり、戦闘の陣頭指揮を取ったりするのは得意ですが、細かな点まで管理する守り神の仕事には退屈してしまうのではないでしょうか。
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海賊船という明らかに非協力的で非アジャイルな環境が、スクラムマスタとプロダクトオーナが兼任できるかどうかとどのような関係があるのでしょう。プロダクトオーナは星の役割の大部分を担い、スクラムマスタが守り神のタスクの大部分を担うのは明らかです。

 

星の例えは、プロダクトオーナーは高くて挑戦しがいのある目標を提示すべき、という期待を上手く表していると思います。

プロダクトオーナーにとって一番大切なことは、出来るだけ大きな目標やゴールを示すことであり、プロダクトバックログアイテムの優先順位付けはその次の作業です。

まずは出来るだけROIのReturnを大きくとる、ということです。

大きな目標が定義されると、チームメンバーのモチベーションも向上しますよね。

 

私はこの例えを知って、プロダクトオーナーの目指すべき姿がより明確になりました。

思い返すとプロダクトオーナー研修でも、「はじめにどれだけ大きく課題を定義するかが大切」と言われていましたね。改めて納得です。

 

スクラムマスターについて

ついでと言っては失礼ですが、守り神という例えもスクラムマスターのサーバントリーダーシップをよく表しています。

あくまでスクラムはチームにとっての手段ですから、「スクラムだからこうすべき!」が増えてくると危ないですね。守り神と認識していれば、こんな罠も避けやすいと思います。